デバイス用高機能材料開発部門

センサ材料分野の研究開発

センサ(ひずみゲージ)の研究

当分野では、様々な装置や機械を正確、安全に動かすのに必要なセンサの開発を進めています。特に、引張りや圧縮といった変形により物体内に生じるひずみを測定するセンサ(ひずみゲージ)の研究を行い、優れた特性をもつCr-N薄膜ひずみセンサを開発しました。

従来に無い新たなセンサの開発

そのセンサ薄膜は、表1に示す通り、ひずみに対する感度(ゲージ率)が大きく、抵抗温度係数(TCR)および感度温度係数(TCS)はゼロ近傍と小さいなどの特長をもちます。その応用としては、ひずみの外に圧力、荷重、力、変位、トルクなどの各種力学量の計測に利用されます。さらに、高感度なことからステンレスなど剛性の高い(即ち頑丈な)基材や構造材での測定が可能となり、安全性の確保ならびに従来の低感度な金属箔ひずみゲージでは難しかった高耐荷重、高速応答、他軸干渉の低減、超小型化ならびに高精度検出などを実現することができます。
また近年、特殊環境で使用可能なひずみセンサが熱望されています。本法人では、図2および図3に示すように、高圧水素ガスおよび高温の環境下において安定で高感度に使用可能なひずみセンサおよび圧力センサなどの開発にも成功しました。従来に無い新たなセンサの開発により社会に貢献します。

高周波材料分野の研究開発

GHzに対応した薄膜材料の研究開発に向けて

本分野では、3GHz 以上の周波数をフロントエンドとする第5世代移動体通信機器向けの磁気デバイスの小型化および磁気ノイズ抑制のための高周波磁性材料を開発しており、半導体デバイスに磁気デバイスが内蔵されることが予想される将来の技術動向も考慮し、その際のデバイス化プロセスに適した薄膜材料に焦点を当てています。
磁性体を高周波領域で実用化するためには、検討しておかなければならない多くの課題があります。例えば、電気的および磁気的損失です。電気的損失には渦電流損失があり、周波数の二乗で増加します。また、複素透磁率の虚数部(μ”)に起因する磁気的損失があり、高周波では磁気共鳴により急激に増加します。このμ”と周波数を掛けたものが、デバイスの損失となる交流抵抗に相当します。本分野では、本法人が開発した強磁性ナノグラニュラー薄膜に注目し、新たな成膜方法の開発、成膜条件および膜組成等を検討することにより、高周波領域でも損失の小さい優れた特性を有する新規な材料開発を進めつつあります。

強磁性ナノグラニュラー薄膜

一般に、高周波用の低損失磁性体を実現するためには、材料が、高い電気抵抗率、高い飽和磁化、および高い異方性磁界を兼ね備えることが必要です。図4は、透過電子顕微鏡で撮影した、高周波ナノグラニュラー薄膜のナノ組織です。磁性金属ナノ粒子(この場合、fcc-CoPd 合金)が、極めて高い絶縁性を有するフッ化物絶縁体(この場合、cF12-CaF2)中に孤立分散しています。本膜は、電気抵抗率が高く優れた高周波特性を有する材料として知られるアモルファス金属磁性材料の、数倍の高い電気抵抗率を持っています。また、ナノ粒子を構成する磁性金属は、高い飽和磁化と結晶磁気異方性を併せ持つCo基またはCoFe基合金です。本膜は、独自開発技術であるタンデムスパッタ法で成膜することにより、長細い磁性金属ナノ粒子が、膜厚方向(⇧)からほぼ同じ角度に膜面内へと傾いて配向することにより、膜面内方向に高い異方性磁界が誘起されます。このように、強磁性ナノグラニュラー薄膜は、高周波磁性体として望まれる要素をほぼ満たしております。
本膜の高周波複素透磁率例を示したものが図5です。μ”が最大となる磁気共鳴周波数(▼)が10GHzを超えており、高周波磁性膜として優れた特性を有することが理解されます。しかし、μ”の低周波からの立ち上がりが非常に緩慢で、透磁率の実数部(μ’)の絶対値も10以下と低いため、これらの改善が今後の研究課題であると考えております。

アクチュエータ材料分野の研究開発

鉛を含まず優れた圧電特性を有する鉛フリー圧電セラミック厚膜の実用化に向けて

本分野では、機械的柔軟性・堅牢性に優れたフェライト系ステンレス基板上に、エアロゾルデポジション法(以下「AD 法」といいます。)により厚さ数μm~数十μmの圧電セラミック厚膜を形成し、それを用いたマイクロデバイスの研究開発を進めています。膜厚が厚いことは、力やエネルギーが関係するマイクロデバイスには極めて有利です。圧電セラミック材料は、電気的エネルギーと機械的エネルギーを相互に変換できる機能性材料ですが、現在広く用いられている材料には毒性のある鉛が多く含まれています。本分野では、鉛を含まず優れた圧電特性を有する圧電セラミック厚膜の開発と、その実用化に関する研究を進めています。

鉛フリー圧電厚膜の特性向上に関する研究

鉛を含まない代表的な圧電セラミックス材料であるBaTiO3(以下「BT」といいます。)は、その優れた機能特性を発揮させるためには高温での焼結が必要です。本分野では、このBT材料を採り上げ、熱酸化処理を施して表面にAl₂O₃相を析出させたステンレス基板上にPt電極膜をスパッタ成膜し、その上にAD法でBT厚膜を積層形成した後、高温で熱処理し、組成の相互拡散状況を分析しました。その結果、図6に示すように、1200℃で熱処理を施してもBT膜と基板間で相互拡散が生じないことが確認されました。また、ステンレス基板上にBT厚膜を成膜し種々の温度で熱処理した後、基板一端を固定し片持ち梁とし、これに電圧を印加して自由端の変位を測定しました。その結果、熱処理温度を高温にすることでアクチュエータとしての変位特性が向上することが確認されました(図7)。
次に、ステンレス基板上に形成したBT圧電厚膜の応用例を紹介します。図8(左)は、圧電素子を手首の橈骨動脈に押し当て、脈拍を測定した結果です。明瞭に脈動波形が検出されております。図8(右)は、素子の曲げ変形を利用した振動発電デバイスとしての評価を行ったもので、片持ち梁状に固定した素子を1回スナップ振動させた場合の出力電圧波形を示します。この結果から、数十μJ の発電が可能であることが確認されました。
今後は、さらに機能性圧電セラミック材料の組成および厚膜形成技術並びに応用デバイスの検討を進める予定にしております。

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